律令国家が変質を遂げる過程でここに発生する法律問題を、実務に携わる法律家として法的正義を見出して行く苦心の堆積である。本書では、177の項目が、内容に応じて「罪科」「売買」「質物」「喪服」条など14に分類されている
[上巻(62項)には罪科条62項、中巻(57項)には禁制条14条・売買条8項・負債条1項・出挙条6項・借物条3項・質物条4項・預物条1項・荒地条3項・雑事条17項、下巻(58項)には処分条17項・喪服条5項・服仮条23項・雑穢条13項を収める。]。「雑穢」の項目など本来
明法道の枠外とされていた宗教慣習に関する項目が設けられているのも特徴的である。本書は12世紀初頭に大筋が形作られ、12世紀中増補を繰り返し完成に至ったとされる。坂上氏・中原氏の家学を結集して
明法勘文作成のための資料とするために編纂したと考えられ、明法道における坂上・中原両氏一族の地位を守るために形式的な法解釈によって律令と現実との乖離に対する責任回避を図った部分も無い訳ではない。だが、項目の中には律令の条文を生かしながらも運用に工夫し、かつ、時には恣意的に使い、変革する社会の法慣行を積極的に採りいれ問題に現実的に対応している。